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「中国の新しい対外政策」まとめ

 この本ですね。

中国の新しい対外政策――誰がどのように決定しているのか (岩波現代文庫)

中国の新しい対外政策――誰がどのように決定しているのか (岩波現代文庫)

 

初めに

まずはこの前読んだリンダ・ヤーコブソン,ディーン・ノックス「中国の新しい対外政策 誰がどのように決定しているのか」(原題:NEW FOREIGN POLICY ACTORS IN CHINA) 岡部達味監修,辻康吾訳,岩波現代文庫.  から始めたいと思います。中国関係のゼミナールで1冊目にとまず読むことを勧められたものです。ストックホルム国際平和研究所の研究員が著者で、英語版全文はウェブで全編公開されています。原題でググればすぐ出てきます。

まとめ

どんなもの?
中国対外政策の様々な関与者を分類して分析し、評価した論文。数字はない。

先行研究と比べてどこがすごいの?
読み進めると当時としては軽視されがちであった中国の対外政策関与者の内、外周にいた(=非公式の)関与者の評価が挙げられる。
党政治局内部にいたるまでの取材。

ポイントはどこ?
対外政策関与者について3つの動向
1.権限の細分化
2.中国の更なる国際化は不可避という関与者たちの共通の認識とその程度について異なった認識
3.すべての関与者、特にネチズンの間に中国は国際的により積極的に国益を追求すべきだという見解が優勢

実証の方法は?
70余名に及ぶインタビューや公的発言に基づく分析が行われている。

議論はあるか?
ぶっちゃけ少し古い。書かれたのが胡錦涛時代で確かに分権化が進んでいた様に見えるが、現行の習近平時代はむしろ集権化されている。

次に読むべき論文は?
対外政策ではないが政策の統一、集権化という意味で Jyrki Kallio, Doctoral thesis: Towards China’s Strategic Narrative, University of Lapland,Finland, November 2016が挙げられます。主に中国のStrategic Narrative(=戦略的説話、この国がどこへ向かうのかという物語と説明するのが妥当か?)を最高指導部の公式文書や談話と諸子百家など(特に儒家)の思想を踏まえて分析した博士論文です。

他についてはそんなん知らんがなと思いつつ、出版社のサイトから引用しますね。

この研究の成果を取り入れて書かれたた訳者の辻康吾さんの論文「中国対外政策の決定過程――「トラとパンダ」の不協和音」(『世界』2010年12月号)と,1998年から2008年にかけて中国外交を主導した唐家璇元外相・国務委員の『唐家璇外交回顧録 勁雨煦風〔けいうくふう〕』(2011年1月刊)を併読されることをおすすめします.

出典:https://www.iwanami.co.jp/book/b255879.html
岩波書店 中国の新しい対外政策より (閲覧日:2017/12/05)

要約

中国共産党の最高機関、政治局常務委員会はいまだに政策決定の最終決定権を握っている一方で、様々な党組織、政府機関、解放軍の諸部門は指導部の決定に影響を与えようと競合関係にある。外交部(=外務省)はもはや外交政策への関与者の一つに過ぎず、最重要のものではない。これらの関与者の多くは中国国益について異なった認識を持ち、お互いの競合する内政上の計画や活動の結果として対立的な動機さえ抱いている。また大学、調査機関、軍大学の専門家、石油関係企業、その他企業の首脳部、銀行役員、地方政府幹部、主要メディア代表が従来の枠組みの周辺で活動している。

構成

  1. 序章
  2. 対外政策における公的関与者(共産党、国務院、人民解放軍
  3. 対外策関与者の施行に影響する所原因
  4. 周辺の関与者(実業界、地方政府、研究機関と学術界、メディアとネチズン
  5. 結論

  

各章の細かいところは次回です。